ところがどっこい、水泳です!

 

体重を減らすことにした。一日中パソコンモニターの前に座って仕事をして、すり減ったMPを回復させるため夜にはラーメンを食べる。新陳代謝が着々と落ちておっさんに向かいつつある体でこんな生活をしていたら、ドンドコと脂肪が蓄積していってしまった。

まるでミルフィーユカツのごとく薄い肉が少しずつ腹回りに重なっていくようだった。そんなはずはないと見て見ぬふりをしていたが、放置していたらたっぷりとした立派なカツ(腹の肉)ができあがっていたのだ。

減量すると決めたら、次はその方法を考える。巷では「○○だけダイエット」系の本が量産され、巻くだけだの、寝るだけだの、「ほんのちょっと、先っちょだけでいいから!」的な軟派な発想であふれているが、ここは硬派に行きたい。

 

皇居ランなんてやってられない

 

消費カロリーが摂取カロリーを上回ればいいのであって、つまるところ運動するか食事制限をするのが基本なのだ。しかし、走ることは皇居ランをするやつが思い出されて鼻につく。何より苦痛に耐えながら寒空の下を走るのは考えられない。

食事制限はどうだろう。肉の代わりに豆腐を投入してタンパク質を摂取すれば、問題ないはずだが、実践してみると調理技術のない人間が肉を放棄してしまうと、味気なくなり食事が単に口を上下に動かす時間に変り果てた。

納豆や漬物などの発酵食品を利用すれば、旨みを加えられるという知恵を得られたのはよかったが、結局のところ失敗に終わり、いつものように鶏もも肉をじゃんじゃん使った料理に戻ってしまった。

減量プロジェクトは早くも断念しつつあったが、ここで水泳という選択肢が急浮上した。水泳は時間当たりのカロリー消費量がトップレベルらしく(ただしソースは2ちゃんねる)、風が吹けば桶屋が儲かる的な感じでいろいろ捗るらしい。

昔、スイミングスクールに通っていたこともあるので、泳ぐことに対する抵抗はない。むしろ長時間泳いでいてもけっこう飽きず、呼吸はせわしなくなるがランニングのように肺が苦しくなることはない。何も考えず頭をスッキリさせられるのも精神衛生上よさそうだ。

 

水着ってどんなの着るんだっけ

 

ということで水泳を始めることにした。スポーツクラブはそれなりに費用はかかるから、とりあえずは公営プールで。困ったのは水着だった。手元にあるのは海水浴用のパンツだけ。どんなのを穿いていけばいいのかわからない。

小さい頃のスイミングスクールでは股間が強調されるブーメランタイプだったが、公営プールで着用している人はいなさそうだ。便利な時代になったもので同じような疑問を持つ人が質問サイトに投稿していた。それによるとスパッツみたいなタイプが主流らしい。そういえばイアンソープがそんなの着ていたな。

百貨店の水着売り場でおばちゃん店員に薦められるがままに適当に選び、キャップ、ゴーグルと合わせてトータル8000円程度。安くはないが腹の肉を削るためなので仕方がない。翌日にはプールに行ってみた。

前評判通り、減量目的のおっさんがメインの客層で、子連れもちらほらといった具合だった。本格的にやっている人は専門の施設やジムに行くのだろう。

だけどそのぐらいのゆるさのほうが、ゆっくり泳ぐぶんにはちょうどいい。最初は運動不足で筋肉痛になるほどだったけど、何回か通ううちにそれもなくなった。

 

クロールの常識が変わってた

 

泳ぎ方に関しては、昔と今では常識が変わっているのが厄介。クロールひとつにしても、ストロークの仕方が科学的にいろいろと分析されて、今は○○型が主流とかなんとか。そのあたりについては本を1冊ぐらい読む予定。

でも小さいころは何も考えずに泳いでいたから、大人になってあらためて頭を使って捉えなおす作業は結構楽しい。いかに水の抵抗を減らすかのゲームと考えて姿勢を整え、腕のストロークで自ら作り出した水流に乗っかっていくことをイメージしたらスイスイと進むようになった。

バシャバシャと必死に腕を動かせばいいってもんでもないようだ。でも上達するとあまり疲れなくなったから消費カロリーは減少しているはずで、これはこれで悩ましいところ。

平日と休日の1回ずつの週2ペースでしばらくは続ける。減力目的だが体重は今のところあまり減らず、筋肉のうえに脂肪がのったガチムチ感ある体型へ向かっている。これが水泳体型か。。

 

タイトルはホッテントリメーカーから。 

 

「自意識の高い」文章を求めて テキストサイトブームの時代

 

 

 ネットに文章を書いて公表すること、今では当たり前になってしまったことだが、ちょっと前までは参入障壁が高く、かっこいいことと見なされていた。ネット黎明期である1990年代後半から2000年代前半にかけて、日記やコラムを主に扱うテキストサイトと呼ばれるサイトが一大ジャンルを形成していた。最近ではニコニコ生放送がそれに相当すると思う。

 

 ぼくがネットを始めたのはブログに流れが移行しつつも、テキストサイトの残り香がまだあった時代で、世の中にはこんなにおもしろいものがあるのか、と貪るように深夜にネットサーフィンしては、睡眠不足で授業中に寝る高校生活だった。書き手ではなく単なる読者という立場だったが、思春期時代から「テキストサイト」的なものに影響を受けたせいで、20代になった今でもその影を何となく追ってしまう。

 

 

「正体不明の衝動」が文章を書かせた

 

 

電気サーカス

電気サーカス

 

 

 

 

 テキストサイト全盛期から10年以上経過したが、当時の空気感を描いた小説が出版された。『電気サーカス』(唐辺葉介著、KADOKAWA)は、週刊アスキーで連載していたのをまとめたもので、480ページある作品だ。前口上で主人公がテキストサイトを書き始める動機について述べた部分があるので引用する。

 

 僕にはためになる専門知識もなければ、紹介したくなるような可愛いペットもいない。カッターナイフで手首を切るといったような体を張った芸も持ち合わせておらず、世間に打ち出したくてたまらぬ燃えるような情熱に満ちた主義や主張も存在しないのだ。

 

 なんてことだろう!心の中に、伝えたいことが、なにもないんです。なのに何かしら書きたい、書いて全世界に公開したい、という正体不明の衝動だけが燦然と心の中に輝いている

 この部分が一番端的に当時の管理人の思いを表現しているのではないかと思う。テキストサイト一般に書かれていた内容は、最近のブログのような政治に関するものや仕事に関するライフハックでもない。言ってしまえばどうでもいい身の上話であり、そうでなければ馬鹿らしいネタがほとんどだった。荒削りな文章で誤字も少なくなかったが、それでも背後に強い衝動が感じられて勢いがあった。

 

 『電気サーカス』ではサイトの管理人がオフ会を繰り返し、シェアハウスまで始めて交流を深める様子が描かれる。あの人は実は~といった噂話や、誰と誰がつながっているという情報が共有される面倒な人間関係模様もリアルだ。シェアハウスにサイト運営者でもある女子中学生を連れ込み交際をしたり、脱法ドラッグを使用したりとやりたい放題で、そういえばマジックマッシュルームなどが流行った時代だった。

 

 登場人物のほとんどが若く学生やフリーターあたりがメインで、精神的な不安定さを抱えている。オフ会などリアルでのコミュニケーションで忙しくなると、サイトの更新が滞っていく描写は、本当にそうだったんだろうという気がする。確かにブーム終了に向かって、管理人同士の交流が増えている印象があった。

 

 

 

簡単につながれる時代

 

 完全に過去のものとなったテキストサイトだが、再興を求める声はたびたび出ていて、最近でも2ちゃんねるVIP板

VIPでテキストサイトブームをまた引き起こそうぜまとめ - VIPPERの作ったサイト

 のような取り組みもある。しかし、ブログがありSNSが充実して動画サイトもある現在、当時のような盛り上がりからは程遠い。何より、ネットサービスの発達により承認欲求が簡単に満たせるようになったことが、要因として大きいように感じる。

 

 趣味の仲間はツイッターで簡単に見つけられるし、そこからLineに移動して込み入った話までできる。テキストサイトのようなサイトを開設して、鬱屈した思いをネタに昇華させる必要はもはやなくなった。コミュニケーションへの餓えが駆動していた表現は、簡単に他人とつながれるようになったことで消失したのだ。

 

 テキストサイトの提供者は激減したが、「テキストサイト的」コンテンツの需要はあり、企業によって運営されている。テキストサイトの要素を、大きく分けてネタ企画と自意識の2つの要素だとするならば、ネタ企画の部分をビジネス化したのがデイリーポータルZだ。ライターの顔は出てくるがもちろん文章校正は入っていて、強烈な自意識を感じさせる文章はほとんどない。

 

 一時は自意識を感じさせる文章を求めていろいろ探し回ったが、ブログは短文の投稿がメインでどこか物足りない。「カッターナイフで手首を切る」人々はいるが、画像ばかりでバックグラウンドが読み取れないからおもしろみに欠ける。はてな匿名ダイヤリーはまれに良質な文章が転がってるので、テキストサイトと多少傾向は異なるもののこれがまだ救いだ。

 

 テキストサイト再興は難しいにしても、ヒリヒリするような自意識にあふれた荒削りな文章がたくさん読めるブームが、何らかの形でまた起こればいいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラグビー部はスクールカースト上位にいるのか

 

 

 友人に誘われ初めて大学ラグビーの試合観戦に行った。ルールに関する知識がほとんどなく、「ボールは前に投げちゃいけない」ぐらいしかわからないまま、ほわほわしながら国立競技場で試合を観た。

 

 それにしてもスポーツとなると、スクールカーストと結びつけて考えてしまう癖がある。サッカー部やバスケ部を頂点として、その他の運動部、文化系部活という序列があり、人間的イケてる度が左右されるというアレだ。ぼくの通っていた中学・高校にはラグビー部がなかった。ラグビー部はスクールカーストでいうと、どこに位置づけられるのだろうか。

 

 アメリカ映画であれば白人アメフト部がスクールカースト頂点で、チアガールとキャッキャウフフのワンダーランドだ。ラグビーもアメフトに近いような気がするから(適当すぎる認識)、ラグビー部のある日本の高校では、サッカー部と並ぶ人気部活なのかもしれない。大学ラグビーの会場には、20代と見られる若い女性客もけっこういた。

 

 ただ、ファッションセンスがあり爽やかな笑顔を振りまくサッカー選手とは、ラグビー選手の印象は大分違った。試合開始前に巨大スクリーンで両チームのメンバー紹介がされたのだが、登場する顔がことごとく運転免許証のような写りというか、ありていにいえば悪人顔なのだ。みな目つきが鋭く、頑丈そうな顎を備えている。体重が一定を超えるとあのような顔つきになるのだろうか。

 

 一般的に日本人男性は線の細いほうが好まれると言われるけれど、その方面はライバルの多いレッドオーシャンだから、むしろマッチョ化したラグビー体系ほうが、特定の女性層にモテるかもしれない。ぼくも身長的には十分な高さで、偶然にも体重が正月以降順調に増え続けている。あと数十キロ体重を増やして筋トレするだけで、夢のガチムチ体型のできあがりだ。さて、モテる体型になるという言い訳ができたから、目の前のシュークリームを遠慮なく食べるとする。